それでもなお、ほんの少しでも具体的に知りたいという気持ちは、 この一年間私をコンピューターによる計算に駆り立てました。 こんなことをして・・・、と思わないでもなかったですが、 やはりどうしても知りたかったのです。 ふとオイラーがゼータ関数の値を17個も計算したのも、 こんな気持ちからではないかと思ったりします。
宇宙のことを知りたいと思った人々は、空を見上げて太陽や星々を 観察しました。もっと遠くの天体を詳しく見たいと思って望遠鏡を作り、 それは巨大化していきました。 前世紀には、可視光で見えない天体を電波望遠鏡を用いて、 観測するようになりました。 また、地上では観測の精度がどうしても悪くなるため、 宇宙空間まで望遠鏡を打ち上げ観測をしています。 1987年には、超新星爆発の際放出された11個のニュートリノが、 カミオカンデで検出されました。 さらにあくなき好奇心は、大施設を建造して重力波の直接観測 を目指そうとしています。 それは、より具体的な宇宙の姿を知りたいという強い欲求です。 そのおかげで現在では、白色矮星、中性子星、ブラックホールなどの 星々のことや、銀河や銀河群、宇宙の大規模構造、宇宙の誕生の様子など、 多くのことを知ることができました。 その一方で、さらに多くの謎を提供してくれました。 原理的な方程式はもちろん大事ですが、実験や観察がいかに 大事かということをこれらの研究は教えてくれます。
予算規模はまったく違いますが(もちろん圧倒的に少ない)、 私もガロア群を少しでも眺めてみたいと思いました。 そのうちに、ゼータの値たちがある種の銀河を構成しているように 思えてきました。もしこの宇宙の最初の探検家オイラーが現代にいるなら、 ゼータの値たちの集合を銀河と呼ぶのではないか、 そしてそれぞれの値の対応をeclipseと見るのではないか・・・ そんな空想をしました。
追記 オイラーは本当にそう考えていたかもしれません。 (2007年1月23日)
追記 2015年9月14日5:51(米東時間)に重力波の直接的な証拠が観測されました!