「オリジナリティのある重要な事実を発見すること」、 これが研究者の主要な使命なのでしょうが、 さらにその結果を論文にし、さらに専門雑誌に掲載することによって、 誰もが知ることができるようにする義務もあります。 その際、やはりよく知られた専門雑誌(ただし普通の書店では販売していません)に 掲載できれば良いに違いありません。 しかし、多くの研究者が生み出す結果はひと月に数百万ページにものぼり、 全ての論文をよく知られた雑誌に載せることは不可能なため、競争が起こるわけです。
ところで「よく知られた専門雑誌」とはなんでしょうか?
もし商業雑誌なら発行部数が目安になるでしょうが、
専門雑誌はそれでは問題があります。
なぜなら、購入するのは大学や研究機関で、ある程度名の知られた雑誌なら
たいていは購入しているのでそういう場合あまり差が出ないためです。
そこで Eugene Garfield 博士が考え出したのがインパクトファクター(以下IF)です。
これはおおまかに言えば、
その雑誌に掲載された論文が2年のうちにある程度名の通った雑誌に平均
何回引用されているかという値です。
正確にいうと
単に引用数を考えるより良いのは間違いないのですが、 他分野間での比較には明らかに問題がありそうです。 レスポンスの違いもあるでしょうし、引用の仕方とかも違うのではないでしょうか。 数学のある論文に刺激を受けてアイデアを得て何かしらの結果を得たとします。 その一般化や影響を慎重に調べたため、1年後に投稿したとしましょう。 たいていはその論文の査読と書きなおしで受理までに半年から1年くらいかかります。 さらに論文掲載が決まってからも掲載までに1年くらいかかる雑誌は多いはずです。 これだとその論文が上の評価でカウントされない場合が起こり得ます。 数学の専門雑誌のIFが低い理由には、このことが主に挙げられると思います。 付け加えておくと、たとえ古くても新たなアイデアや視点を生み出す 源泉のような重要な論文が多数あって最近の論文ばかりが重要ではないのです。 逆にそういう論文を書くため慎重に結果を吟味する必要があるのです。 ちなみに、1997年のIFでは、有名科学雑誌の Cellは 37.197、 Natureは 27.368 であり、 いわゆる純粋数学の雑誌でIFが最も高い雑誌は Annals of Mathematics で 2.071、 次が Journal of the American Mathematical Society で 1.397、 その次がInventiones Mathematicae で 1.127 という値になっています。その他の雑誌のIFは、 ここ(207k)にあります。
もちろん、長期的データに基づくIFとか、引用の半減期とか、 各論文の引用数とかいろんな値が考え出されていて、 やりかたを変えると値はもちろん変わりますし、 値の評価も分野や個人によってまちまちでしょう。 これで全てを評価しようとするから問題がでてくるわけです。 ( インパクトファクターとは何か:正しい理解と研究への生かし方 )
いろいろ問題はありそうな IF ですが、専門分野を限ればそれなりに
雰囲気はでているような気もします。
数学雑誌のインパクトファクター(KIASへのリンク)
雑誌別
雑誌順位 です。
しかし、IFについて調べていて
ある学会でその学会発行の雑誌のIFを上げるために
いろいろな手段を挙げていたページがあったのを見て
ちょっとなあと思いました。気持ちは分からないでもないですが。