講演者氏名:原下 秀士
講演題目:Ekedahl-Oort Strata Contained in the Supersingular Locus
所属:東京大学数理科学研究科COE特任研究員
講演内容の簡単な説明:
正標数 $p$ の体上の主偏極アーベル多様体のモジュライ空間の
基本的な stratification として Ekedahl-Oort stratification
がある. これは Newton-Polygon による stratification とともに重要だと思われて いる.
Ekedahl-Oort stratification に関し F. Oort が以下のような予想をたてていた.
1. Ekedahl-Oort strata は supersingular locus に含まれなければ既約である.
2. supersingular locus に含まれれば十分大きな $p$ に対して既約ではない.
今回 2. を明示的に解決した.
即ち, supersingular locus に入ってしまう 各 Ekedahl-Oort stratum の
既約成分の個数がある四元ユニタリー群の類数に等しいことを示した.
この類数は mass formula で下から評価できるため 2. が示される.
一方 1. は G. van der Geer と T. Ekedahl が解決したとの報告があるため,
上の F. Oort の予想, さらに強く各 Ekedahl-Oort stratum 既約成分の個数に関する問
は完全に解決されたことになった.
この結果,
Newton-Polygon stratification
Ekedahl-Oort stratification
両者に対する基本的な性質(次元、既約成分の個数)について
完全に解決されたことになったので(前者は F. Oort (2002))
是非この集会で報告させて頂きたいです.
講演者氏名:新妻康弘
講演題目:$\Ext1({\cal G}^{(\lambda)},{\cal G}^{(\mu)})\rightarrow \Ext1(\widehat{\cal G}^{(\lambda)},\widehat{\cal G}^{(\mu)})$ の単射性につ いて
所属:中央大学理工学研究科後期課程1年
講演内容の簡単な説明:
私のA note on extensions of algebraic and formal groups, IV の第3節の最後で、
混標数の離散付値環に対して
$\Ext1({\cal G}^{(\lambda)},{\cal G}^{(\mu)})\rightarrow
\Ext1(\widehat{\cal G}^{(\lambda)},\widehat{\cal G}^{(\mu)})$
の単射性について考察し、単射になる例と零射になる例を示してありますが、
新妻君が色々と結果を付け加えました。
$\widehat{\cal G}^{(\lambda)}$ は本田平さんが二次体のzeta函数と関連して考察 している
形式群でもありますので、そちらとの関連が分かればまた問題が面白くなると期待し ています。
講演者氏名:原本博史
講演題目:コイン投げギャンブル必勝法
−符号理論による擬似乱数の非統計的検定
所属:広大理
講演内容の簡単な説明:
現在用いられている擬似乱数は、無視が出来ない統計的偏りを
持っている。このような偏りは、従来は統計的検定、よって求められてきたが、どの
くらいの大きさの標本を用意すれば、どれくらいの精度で偏りが検出でき
るか、はっきりはわからなかった。
今回の研究は、符号理論に現れるMacWilliams恒等式を用いて擬似乱数
の偏りを計算するアルゴリズムの開発と、それによる擬似乱数の分布を調
べる方法を、いくつかの乱数生成法に対して行った。
講演者氏名:谷口 隆
講演題目:
A mean value theorem for the square of
class numbers of quadratic fields
所属:東京大学大学院数理科学研究科
講演内容の簡単な説明:
概均質ベクトル空間の大域ゼータ関数の中に、極の主要部の情報から
整数論的な量の漸近評価が得られると期待されているものがある。
例えば、2元3次形式の空間のゼータ関数から、
3次拡大体の判別式の分布に関する情報が得られている。
今回、代数体k上の概均質表現
G = GL(2) \times GL(2) \times GL(2),
V = k2 \otimes k2 \otimes k2
(GL(2)の自然表現の外部3回テンソル積表現)
について、その内部型を考えることで、
kの2次拡大体の族の``類数と単数基準の積の2乗''
に関する漸近評価を得ることができた。
この表現のゼータ関数と類数と単数基準の積の2乗との関係や、
内部型を考える利点などを中心にして、証明の概略を話したい。
講演者氏名:中筋麻貴
講演題目:Generalized Ramanujan Conjecture
所属:慶應義塾大学理工学部
講演内容の簡単な説明:
Generalized Ramanujan Conjectureは,
ラマヌジャン予想を表現論的に一般化したものとして
知られており,GL_n(F)\backslash GL_n(A_F)のcuspidal保型表現の
Satake parameterを用いて表される.
この時,Fは体,A_Fはそのアデール環とする.
これをFが一般の虚2次体において,
これまでの評価を改善したのでその結果を発表する.
講演者氏名:見正 秀彦
講演題目 類指標に付随する$L$関数の普遍性
所属:岐阜工業高等専門学校 非常勤講師
講演内容の簡単な説明:
任意の正則関数は、Riemann zeta関数の適当な垂直方向への平行移動により、一様近似される事が知られている。最近、虚2次体上のHecke $L$関数に対し、類指標を変数としたとき、類似の性質が成立する事が証明できた。この講演では、結果、証明の概略を報告する。
講演者氏名: 鈴木 正俊
講演題目: 数論的L-関数の零点の相互関係について(仮題)
所属:
名古屋大学多元数理科学研究科 博士課程後期3年
講演内容の簡単な説明:
2つの異なるL-関数の零点にある種の相互関係がある事について説明したい。
具体的に扱うL-関数の組としては現在の所
・Selberg Classに属すL-関数とそのGL(1)-twist
・Riemann zeta-関数とGL(2)の保型L-関数
を予定している。
講演者氏名:栗林 正憲
講演題目:多重ガンマ関数と多重サイン関数の相乗公式
所属:大阪大学大学院理学研究科数学専攻
講演内容の簡単な説明:
本公演の予定は多重Hurwitzゼータ関数\zeta_r(s,x)によって定義される
多重ガンマ関数の相乗公式および新谷型多重サイン関数の相乗公式についてです。
多重ガンマ関数の相乗公式については、
ガンマ関数の相乗公式と同様の結果を得ることが出来ました。
特にべき乗の因子に多重Hurwitzゼータ関数の特殊値\zeta_r(0,x)が現れるのですが、
これをBernoulli多項式とStirling数を用いて表現したのは独自のものと思います。
多重サイン関数の相乗公式については黒川信重氏が
"Multiple Sine Functions,Forum Math.15(2003),no.6,839--876."という論文で
既に発表していますが、
私は(1+x+x2+...+x^n)^rを展開した時のx^kの係数(Multinomial triangle coefficients)
(n,r,k)を用いてより簡潔な表示にしました。
講演者氏名:梶川 純
講演題目 (仮題):多重ゼータ値の duality のシャッフル関係式による導出
所属:九州大学大学院数理学府数理学専攻 D3
講演内容の簡単な説明:
多重ゼータ値 (Multiple zeta value, MZV) には,
定義の多重和を用いたものと反復積分を用いたものの2通りの表示がある.
その反復積分表示にある変数変換を施すことによって,
``duality'' という非常に簡明な線形関係が得られる.
また, MZVの多重和どうしの積, 反復積分どうしの積がそれぞれMZVの線形和で書け,
その表示が異なることから, ``double shuffle relation'' という関係が導かれる.
この関係を MZV の発散する index まで拡張したものを
``extended double shuffle relation'' (EDSR) という.
EDSR もまた MZV の線形関係を与え,
MZV の線形関係は全て, EDSR から従うであろうという予想がなされている.
しかし, duality については, 簡明な形であるにもかかわらず,
EDSR に帰着するかどうかわかっていなかった.
今回は, duality のある系列の和において, EDSR による導出ができたので,
それを発表する.
講演者氏名:山崎義徳
講演題目:multiple finite zeta functions
所属:九州大学大学院数理学府修士2年
講演内容の簡単な説明:
デデキント環の剰余環の位数が有限であるようなイデアルに対して、
multiple finite zeta function という関数が定義できます。この関数は本来、
約数関数の多重化として導入されたのですが、オイラー積や関数等式をもつなど
ゼータ関数の性質をいくつか持つことが示されます。
今回は代数体の整数環の場合を話します。この場合、零イデアルに対応するも
のがデデキントゼータ関数の積になることがわかります。また、考えている代数 体を拡大すると、どのようにこの関数がL関数の積に分解するかを話したいと思
います。
講演者氏名:新井 啓介
講演題目:楕円曲線のTate加群へのGalois作用の像について(仮題)
所属:東大数理
講演内容の簡単な説明:
EをQ上のCMをもたない楕円曲線とすると、Serreの定理により、各素数pに対し、
Galois群の像Im(G_Q -> GL(T_pE))は開部分群である。この像がEによらず一様に
大きいことを示す。
講演者氏名:長谷川武博
講演題目:On towers of function fields over finite fields
所属:早稲田大学 理工学研究科 数理科学専攻
講演内容の簡単な説明:
良いパラメータをもつ符号の作り方の1つに
有限体上の函数体の塔を利用する方法が知られている.
この講演では いくつかの函数体の塔を構成して,そのGarcia-Stichtenoth不変量
\lambda(F):=\lim_{n \to \infty} (the number of rational places of
F_n/F_q)/(the genus of F_n/F_q)
を計算し,そこから代数幾何符号を作る.
有限体F_q上の函数体の塔とは 次を充たす函数体の列:
1) F_0 \subseteq F_1 \aubseieq F_2 \subseteq \cdots;
2) 拡大F_{n+1}/F_nは次数が2以上であって,分離的;
3) あるsに対し,F_sのgenusが2以上.
講演者氏名:山下 剛
講演題目: p進多重ゼータ値の次元について
所属 東大数理
講演内容の簡単な説明:
複素多重ゼータ値がなす線形空間の次元に関するZagier
の予想は、その一方の不等式が示されている。これのp進類似を証明する。
講演者氏名:山上 敦士
講演題目:On $p$-adic families of Hilbert cusp forms of finite slope
所属:京都大学理学部数学教室(学振研究員)
講演内容の簡単な説明:
fixed slope をもつ Hilbert cusp forms の空間達の
$p$-進整数 weight を用いた $p$-進補間について述べる.