代数的整数論1
素因数分解って覚えていますか?
どんな自然数もいくつかの素数の積に書くことができ、
しかもそれは順番をいれかえればどれも同じというやつです。
たとえば、1386 は 2*3*3*7*11 と書けますが、ほかにどう分解をしても
やはり2が1個、3が2個、7が1個、11が1個出てきて、ほかの素数は決して出てきません。
すごく当たり前のことのようですが、これが結構面白いのです。
たとえば、与えられた自然数をできるだけ早く因数分解するには
どうしたらいいでしょう?
少しやってみれば、こんなに単純そうに見える問題が大変に難しいことに気がつきます。この困難さを利用したものとしてRSA公開暗号があります。
もしあなたが自然数の素因数分解の高速アルゴリズムを得たなら、
ぜひ次の合成数を分解してみてください。
RSA-140 =
21290246318258757547497882016271517497806703963277
21627823338321538194998405649591136657385302191831
6783107387995317230889569230873441936471
(140 digits)
ということだったのですが、
1999年2月2日に一般化された数体ふるい法により上のRSA-140は分解されて
しまったようです。そんなわけで次は、
RSA-150 =
15508981247834844050960675437001186177065454583099
54306554669457743126327034634659543633350275777290
25391453996787414027003501631772186840890795964683
(150 digits)
ということだそうです。
といっている間に
RSA-155 =
10941738641570527421809707322040357612003732945449
20599091384213147634998428893478471799725789126733
24976257528997818337970765372440271467435315933543
33897
(155digits, 512bits)
が一般数体ふるい法によって分解されてしまいました。
というわけで次に分解すべき合成数は、
RSA-160 =
21527411027188897018960152013128254292577735888456
75980170497676778133145218859135673011059773491059
60249790711158521430207931466520284014061994699492
7570407753
(160 digits)
ということでしたが、これも分解され、
さらに2003年3月には
RSA-576=
18819881292060796383869723946165043980716356337941
73827007633564229888597152346654853190606065047430
45317388011303396716199692321205734031879550656996
221305168759307650257059
(174digits, 576bits)
も分解されました。(Prize $10,000!)
というわけで次の賞金狙いは、
RSA-640=
31074182404900437213507500358885679300373460228427
27545720161948823206440518081504556346829671723286
78243791627283803341547107310850191954852900733772
4822783525742386454014691736602477652346609
(193digits, 806bits)
(Prize $20,000)でしょう。と言っていると、2005年11月に
分解されました。では、更に次の問題(Prize $30,000!)は、
RSA-704=
74037563479561712828046796097429573142593188889231
28908493623263897276503402826627689199641962511784
39958943305021275853701189680982867331732731089309
00552505116877063299072396380786710086096962537934
650563796359
(212digits, 1009bits)
ということでしたが、2012年7月に分解されました。
すでに、RSA Lab のチャレンジは終了しましたが、チャレンジングリスト
は次のようなものでした。(617桁の合成数を含む。)
(RSA Numbers )
上のような具体的な問題もなかなか面白いものですが、
Gaussが高等的アリトメティカと呼んだ整数に関する理論も
非常に美しい調和と不思議さに満ちた広大な世界です。
(ほんの少し垣間見ただけですが。)
以下は、数体の類体論を完成された高木先生のお言葉です。
「整数論の方法は繊細である、小心である、その理想は玲瓏にして些の陰翳をも
留めざる所にある。代数学でも、函数論でも、又は幾何学でも、
整数論的の試練を経て始めて精妙の境地に入るのである。Gaussが整数論を
数学中の数学と観じた理由がここにある。」
他分野から文句がでそうだけれど、きっとそうなのです(期待を込めて)!
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