数論


circle limit 「自然数」・・・これはだれもが知っている単純なもののはずです。しかし、実はつきつめると非常に複雑で興味深いものであることが分かってきます。
この自然数の中で、自分と1以外の掛け算でしか表せないような数を「素数」と呼んでいます。逆にそうでない数を「合成数」と呼びます。1は素数とは呼ばないのが通例です。素数の例は、2,3,5,7,11,13,17・・・、合成数の例として4,6,8,10,12,14,15,16・・・などなどです。この比較的単純な定義のあとに、

「素数全体は有限個ではない」

という定理が得られます!この定理の証明は、ギリシア(BC300頃)Eukleides(Euclid)の証明に溯ることができます。まず、p1=2 として、以後

pn+1= (p1 p2...pn-1 pn+1 の最小の素因数)
と定めます。実際、p2=3, p3=7, p4=43, p5=13・・・となります。 pn+1は、p1, p2,...,pn-1, pnでは割れませんから、p1, p2,...,pn-1, pn,pn+1..... はどこまでも続く異なる素数の列となります。すなわち、素数全体は有限個ではないわけです。(もともとよくある背理法の証明を書いていたのですが、吉岡均さんのご指摘により変更しました。・・・直観主義の立場もありますし・・・。)
この証明は神様の証明だなあ、ということを感じます。確かに無限個の素数を探し出す方法は述べられているのですが、実際に無限個の素数をはっきり書き下しているわけではありません。ちなみに、現在地球上で知られている最大の素数は 257,885,161-1です。(GIMPS)この数がいかに神様の証明に及ばないかは、数字をいっぱいに書いた紙をこの宇宙全体に埋め尽くしても、それより大きな素数が存在するはずということで分かります。(紙の厚みはあり宇宙の体積は有限だと仮定、特異点にはどう行こう、非有界だったらどうしよう、紙はどうやってつくろう。)

実はこの問題の探求は現在も引き続き研究されています。素数は無限個あることはわかったけれども、実数xまでに素数は何個(π(x)とかくことにします)あるだろうかという問題です。この問題に関してはHadamard とPoussinによって独立に証明された素数定理

limx→∞ π(x) log x/x =1

があります。そして、名高いRiemann予想(Riemannのゼータ関数の零点は自明な零点を除けば実軸が1/2のものに限られるであろう)が成り立てばより精密な等式

π(x)=Li(x)+O(x1/2 log x)

が成り立つのです!ここでLi(x)=limδ→0∫du/log u、 積分範囲は0〜1-δと1+δ〜x。 Li(x)=x/log x+1! x/log2 x+...+(k-1)! x/logk x+O(x/logk x)。
このように古い起源をもつ素朴な問題が今もなお研究されているのです。


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