オイラーとゼータ関数

English

レオンハルト・オイラー Leonhard Euler (1707-1783)

[Leonhard Euler]

オイラーが計算したゼータ値

 オイラーが計算したゼータ関数の値について思い違いをしていました。 やはり原論文を読んでおかないとこういった間違いをおかすものだという 反省を込めて、このページを作りました。

 「オイラーはどうしてゼータ値を26までしか求めなかったのか?」 ずっとそんな疑問を持っていました。しかし、実は34まで求められていたこと でほっと胸をなでおろすことができました。 詳しくいうと、オイラーは1734/35年の論文E41では6個の正の偶数での特殊値、 1745年の教本E101ではさらに7個(計13個)の特殊値、 1749年の論文E352ではさらに4個(計17個)の特殊値を示しています。 (論文E352は再び印刷されなかったため広く知られていなかった。)

 注目すべきなのは、ふたつの論文でのリストが2k=12、 34=37-3で終わっていることです。 非正則素数と指数の対(p,2k)の中で、 2kが最小となるのが(691,12)であり、 pが最小になるのが(37,32)です。 オイラーはそれらのことを認識した上で、計算していたと考えられるのです。 もし確実な証拠をご存知の方がおられましたら、 ぜひお教え下さい。(2004年6月-)
この考察の続き

題名が「美しい」理由

 他にも素朴な疑問がありました。 「オイラーはなぜE352のタイトルに"beau (beautiful)"という単語を 用いたのか?」 ふつう論文の中では、感情をあらわす単語の使用を避けることが 多いと思うのですが。

 ヒントはありました。 ゼータの正の値を月と書き、負の値を太陽と書いたことです。 太陽と月・・・とくれば日食(月食は地球の影響が必要なので不可) が思いつきます。 つまり、太陽(荒々しいゼータの負の値) を月(静かなゼータの正の値)が 隠そうとしますが、隠しきれなかった光の環 (巨大なガンマ関数の正の値)・(調和のとれた三角関数)/(不思議な円周率のべき乗) が輝くといったイメージです。 オイラーがきっとそう感じたように、 この数式の美しさをより強く明確に感じとることができました。 (下の図の左側が太陽のゼータ−右側が月のゼータの絶対値の対数値を表しています。 交代和なので極はありません。)

 もちろんオイラーが美しい日食を見ていないとすると、 この推測にもあまり説得力がありません。 日食に気が付いてネットで検索したところ、 論文E352を書く前年の1748年7月25日に日食を観測したという事実 (関連論文E117,E142)を知りました。 しかも、それはまさしく金環日食(Annular Eclipse)でした。

1748 Jul 25 11:27 A 122 0.518 0.946 48.7N 24.6E 59 231 05m12s
FIVE MILLENNIUM CATALOG OF SOLAR ECLIPSES 1701-1800
(Berlin 52.52N 13.40E)
下の写真は、日食に関する計算をおこなったオイラーに捧げられた地図 (Homann and Doppelmayr Astronomy Print)です。

[The path of the annular eclipse in 1748 I] [The path of the annular eclipse in 1748 II]

次の画像で、オイラーの気持ちを想像することにしましょう。


[Functional equation of Riemann zeta function]
(2004年11月)

オイラーはサンクト・ペテルブルグを1741年6月19日に出発し、ベルリンに1741年7月25日に到着した。(37日間)
ちょうど金環日食の7年前であった。
(2006年10月)

E41 -- De summis serierum reciprocarum (On the sums of series of reciprocals)
[written 1735, presented 1734, published 1740.] 論文1 特殊値1

E72 -- Variae observationes circa series infinitas (Various observations about infinite series)
[written 1737, presented 1737, published 1744.] 論文2 オイラー積1 オイラー積2

E101 -- Introductio in analysin infinitorum, volume 1 (Introduction to the Analysis of the Infinite, volume 1)
[written 1745, presented 1748, published 1748.] 教本 特殊値2 特殊値の近似値1 特殊値の近似値2

E352 -- Remarques sur un beau rapport entre les series des puissances tant directes que reciproques (Remarks on a beautiful relationship between series of powers and reciprocals of powers)
[written 1749, presented 1761, published 1768.] 論文3 特殊値3 特殊値4 関数等式1 関数等式2 関数等式3

E477 -- Meditationes circa singulare serierum genus
[written 1771, presented 1775, published 1776.] 論文4 二重ゼータ値

Thanks to Prof. N. Kurokawa and Prof. H. Furusho.
登録日:2005年2月19日
タイトル:オイラーの集会を開催したくなったきっかけ。
手段:ウェブページ
内容紹介:オイラーのゼータ値と1748年の金環日食について。
https://math0.pm.tokushima-u.ac.jp/~hiroki/major/euler.html
EP:34301
[EulerWS2012]

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